Google PaLMはGPT-4を超えられるか?Bardとの違いも解説

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2022年11月にOpenAIがChatGPTを公開後、「大規模言語モデル 」の開発競争が激化しています。

2023年5月現在において、OpenAIが開発したGPT-4が独走状態になっていますが、これに対抗すべくGoogleは新たな言語モデル「PaLM」を発表しました。

PaLMとはどのようなモデルで、GPT-4との違いは何なのでしょうか?Googleは自社検索エンジン向けにBardも発表していますが、PalMとBardは何処が異なるのでしょうか?

この記事では、PaLMの概要と特徴、そしてGPT-4やBardとの関係を分かりやすく解説したいと思います。

目次

Google PaLMとは

Google PaLMは、「Pathways Language Model」の略で、2022年4月にGoogle AI Blogで発表された大規模言語モデルです。

Pathways とは、2021年10月にGoogleが概要を発表し、研究・開発が進められてきた汎用AIモデルのことで、PaLM はこれを用いて実現されました。

2023年3月14日に、ようやくGoogle Cloudのサービスとして提供されることが発表され、GmailやDocsなどのクラウドアプリケーションに搭載されるほか、API経由での利用も可能です。

特筆すべきはパラメータ数の多さで、ChatGPTで採用されているGPT-3が 1750憶個に対し、Google PaLMは 5400憶個と実に3倍の規模を誇ります。

パラメータ数の比較グラフ

その一方で、処理対象のタスクに応じて学習経路を用意し、学習時は学習経路に関係するパラメータだけを計算することで、計算量やメモリ量の大幅削減に成功しています。

タスク学習経路切り替えのイメージ図

AIの性能はパラメータ数を増やせば向上しますが、パラメータ数に応じて計算コストが指数関数的に増加するため、PaLMはこの辺を大変うまく調整しています。

Google Bard、GPT-4との違い

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GPT-4 はOpenAIが、PaLMはGoogleが開発したという違いはありますが、共にマルチモーダルなデータ(テキスト以外に、音声、画像データを含むデータ)を用いて学習された大規模言語モデルです。

Google PaLMは、OpenAIとマイクロソフトが担ぐGPT-4の対抗馬として登場しており、様々なタスクに対応できる汎用的なAIとして、両者はライバル関係にあります。

一方Google Bard は、ChatGPTやMicrosoftのBingAIの台頭によって危ぶまれる検索エンジンのシェア争いに勝利するためにGoogleが開発したもので、検索エンジンの性能向上がミッションとなっています。

AI汎用利用と検索エンジンの概要図

Google Bardは、LaMDAと呼ばれる会話特化型の大規模言語モデル(実際は軽量版)を採用していましたが、それだけではGPT-4を超えることができないことを悟ったのか、PaLM(実際には、PaLMの進化版であるPaLM2)に移行しています。

Google PaLMの特徴

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以下にGooglePaLMの特徴についてまとめてました。

高い精度

Google PaLMは、大規模なデータセットを用いてトレーニングされており、多様な自然言語処理タスクにおいて高い精度を発揮します。具体的には、テキスト生成、文章分類、質問応答などのタスクにおいて、他のモデルに比べて優れた性能を示しています。

パラメータ削減による効率化

PaLMは大規模言語モデルでありながら、タスクに応じた学習部分を選んで使えるため、他のモデルに比べて計算コスト大幅に削減され、高速な処理が可能になり、リアルタイム性の高いアプリケーションにも適用することができます。

双方向言語モデル

PaLMは双方向言語モデルであり、コンテキスト内の前後の単語を考慮して予測を行うことができます。

例えば、"私は昨日ジムに行って、たくさん運動しました。今日は筋肉痛で大変です。" という文脈で、"ジム"という単語が現れた場合、PaLMは"行って"という単語があった場合、"ジムに行って"は運動をすることを意味すると推測します。

そして、"たくさん運動しました"という文が続いた場合、"ジムに行って"は運動をするために行ったことを推測します。

このように、PaLMはより自然な文脈を理解することができ、精度の向上が図られます。

多言語対応

PaLMは多言語に対応しており、英語、中国語、日本語などの多様な言語に対応することができます。このため、多言語環境での自然言語処理において、高い精度を発揮します。

ドメイン(分野)適応性

PaLMは、特定のドメインのデータを再学習させることで、容易にそのドメインに適応させることが可能です。

例えば、医療分野においては、専門用語や疾患名などが多く使用されるため、一般的な自然言語処理では対応できない場合が多いのですが、PaLMは医療分野の専門家が作成した医療用語の辞書や医療文書を再学習させることで、医療分野に特化させることが出来ます。

Google PaLMのサービス提供

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Googleは、PaLMを自社サービスに組み込んでマイクロソフトとの差別化を図ろうとしています。想定されるサービスとしては次のものがあります。

  • Gmailの下書、返信、要約、優先順位づけへの応用
  • Googleドキュメント上でのブレインストーミング、文書校正、執筆、書き直しなど
  • Google スライド向けの画像生成、スライドへの操縦、オーディオ、ビデオを用いたクリエイティブなスライドの作成
  • Google スプレッドシートの自動補完、数式生成、文脈に応じた分類、元データからの洞察、分析への手助け
  • Meet上での新しい背景の生成、会議のメモ(議事録)の作成
  • Chatを使ったワークフローの実現

Google PaLMの応用例と将来性

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PaLMは様々なタスクに対応できるため、応用例を全て挙げることができませんので、ここでは最もよく使われるであろう応用例について3つだけピックアップしました。

文書分類

PaLMを用いることで、専門的な文書や業界用語など、特定の分野に関するテキストの分類を高い精度で行うことができます。これにより、医療や法律分野などの専門的な文書の分類や検索を効率化することができます。

機械翻訳

PaLMを用いることで、より自然な翻訳が可能になります。PaLMは、前後の単語を考慮して翻訳を行うため、単語単位での翻訳よりも、より自然な文脈に沿った翻訳が可能になります。

対話システム

PaLMを用いることで、対話システムの精度を向上させることができます。PaLMは、前後の文脈を理解することができるため、より自然な会話が可能になります。

Google PaLMの強み

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ここまでの解説からPaLMについて何が優れているかが理解できたかと思いますが、ここでもう一度まとめておきます。

高い汎用性

Google PaLMは、大規模なコーパスから学習された汎用的な言語モデルであり、多様な自然言語処理タスクに対応できます。例えば、テキスト生成、機械翻訳、文書分類、感情分析などのタスクにおいて高い精度を発揮しています。

コンテキストの理解

Google PaLMは、双方向言語モデルであり、コンテキスト内の前後の単語を考慮して予測を行うことができるため、より自然な文脈を理解することがでます。

高速な処理

Google PaLMは、GPUを使用した並列処理により、高速に推論を行うことができます。このため、大規模なデータセットやリアルタイム処理が必要なタスクでも、高速な処理が可能です。

Google PaLMの課題

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PaLMは優れた大規模言語モデルではありますが、他のモデルと同様に課題もあります。

データ量の依存

Google PaLMは、大量のデータを必要とするため、データが限られている場合は性能が低下します。特に、専門的な分野や低頻度語彙においては、学習データの不足が課題となります。

計算リソースの要件

Google PaLMは、高い性能を発揮するためには大量の計算リソースが必要です。計算量やメモリ量の削減は行っているとは言え、我々が個人で使うパソコンで処理するほど軽量ではありません。

他の大規模言語と比較すると少なく済みますが、それでも学習や推論にはそれなりの計算リソースが必要となるため、コストの問題が生じる可能性があります。

モデルの解釈性の欠如

Google PaLMは、多層のニューラルネットワークから構成されるため、他の大規模言語モデルと同様に内部の動作や学習された表現が解釈しづらいという課題があります。これにより、モデルが行った判断を理解することは非常に困難です。

まとめ

今回はGoogle PaLMについて紹介しました。

Google PaLMはGPT-4と同じく、汎用的な利用を前提とした大規模言語モデルであり、PaLMとGPT-4はライバルの関係です。

一方、Bardは検索エンジンのシェア争いの勝利をミッションとした大規模言語モデルであり、LaMDAの軽量版をベースに作られましたが、更なる性能向上を果たすためにPaLMの組み込みが予定されています。

Googleのクラウドサービスにおいて、PaLMが利用できるようになれば、マイクロソフトのOffice市場に風穴を開ける可能性がありますし、検索エンジンのシェア争いもこれまで通りGoogleの独り勝ち体制が維持できるかもしれません。

2023年は様々なAIが登場し、我々の生活をより良くしてくれるものと期待しています。

今後の展開が楽しみですね!

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