価格COMやパソコン工房などのPCショップのサイトでは、商品説明の中に「CPUスコア」とか「ベンチマーク」という数値が記載されています。
CPUの性能を数値化するには「ベンチマークソフト」と呼ばれるものを使って計測するのですが、この「ベンチマークテスト」の中でももっとも有名は PassMark について、この数値が表すところの意味、パソコン購入時の目安について解説したいと思います。
ベンチマークとは
「コンピュータのハードウェアやソフトウェアの性能を測定するための指標」のことであり、計測するためのソフトウェアを動作させることで計測を行います。
このソフトウェアのことを「ベンチマークソフト」と呼んでおり、CPU、グラフィックカード、ストレージ、ネットワークなど複数項目をまとめて計測できるものや、それぞれのパーツごとに特化したものが用意されてます。
「ベンチマークソフト」は有料、無料を含め様々な企業が市場に参入しており、「計測方法」はその「ベンチマークソフト」を提供する会社独自のものであるため、異なった「ベンチマークソフト」の計測値を比較しても意味はありません。
ベンチマークの値を比較するのであれば、かならず同じ「ベンチマークソフト」で比較しましょう。
PassMarkとは
CPUの「ベンチマークソフト」の中で最も有名な製品が PassMark です。
開発元の PassMark®SoftwarePtyLtd は、オーストラリアのシドニーに本社を置く個人所有のソフトウェア開発グループであり、ITコンサルティングサービスを政府機関や大手IT企業に提供しています。
PassMark は有料のソフトにはなりますが、「PassMark Software - CPU Benchmark Charts」において、3500を超えるCPUのベンチマーク結果を公開しており、価格COMやパソコン工房を始めとするショップブランドのパソコンの製品スペック欄に「CPUスコア」という名前で掲載されています。
ベンチマークは計測する毎に変動する
CPUは常に複数の処理が裏で動作しているため、同じ「ベンチマークソフト」で計測しても、計測の度に毎回値が微妙に異なります。
そのため、サイト独自でPassMarkを使って計測した値を掲載されているケースでは、PassMarkの値が若干異なります。
更に、2020年3月においては「最新CPUに搭載された機能も含めて計測する」という見直しが行われたことで、古いCPUは軒並み20%~30%ほど数値が下がっており、サイトによっては若干低い値で表記されている場合があります。
そもそも、パソコンの性能はCPUの能力だけで決まるものではなく、CPUの性能が2~3割良くなっても、ほぼ体感できません。
それよりもメモリの容量やストレージの速度の方が体感できるため、ベンチマークはあくまでも参考程度と考えておきましょう。
PassMarkと用途の目安
PassMarkの値については、色々なサイトで色々な解釈がされています。
そこで、それらのサイトに記載されている目安の値と、私が過去から現在に至るまでの実体験を踏まえて、以下の様に目安を纏めました。
PassMark値 | 評価 | 用途、快適さ |
---|---|---|
~1000 | 使えない | パフォーマンスが非常に低く、ほとんどの一般的な作業には適していない。 |
1000~ | 何とか使える | メールやネットサーフィン、YouTube動画、簡単な文書編集などの軽作業なら可能。 但し、常に動作が重いことを許容する必要がある。 |
2000~ | 軽作業OK | メールやネットサーフィン、YouTube動画、簡単な文書編集などの軽作業なら問題無く利用できる。 |
3000~ | 仕事で使える | 一般的な事務作業なら問題なく利用できる。 テレビ会議中に文書を開くと処理が重くなりやすい。 |
5000~ | 仕事が快適 | 一般的な事務作業に対してストレス無くこなせる。 テレワークならこのスペックが欲しい。 |
8000~ | 2K動画OK | フルハイビジョン動画編集や軽いゲームなどもストレス無く行える。 |
10000~ | 4K動画OK | 4K動画編集や軽めの3Dゲームなら快適にこなせる。 |
20000~ | クリエイター | 重いソフトの複数同時実行や重めの3Dゲームにも対応できる。8K動画編集も出来なくはないレベル。 |
30000~ | 業務用レベル | 企業や専門家が高度な計算や処理、大規模なデータの操作などを行う際に威力を発揮する。8K動画編集もこのレベルから。 |
文字に書くとこんな感じですが、用途別に表示すると以下のようになります。
あくまでも目安なので、参考程度にお考え下さい。
PassMark値 | 文 書 作 成 | YouTube 動画閲覧 | ネ ッ ト サ | フ ィ ン | メ | ル | テ レ ビ 会 議 | フ ォ ト レ タ ッ チ | プ ロ グ ラ ミ ン グ | 動画 編集 (2K) | 動画 編集 (4K) | 動画 編集 (8K) | 3D Game |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1000~ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | △ | × | × | × | × |
2000~ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ | △ | △ | × | × | × |
3000~ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × |
5000~ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | × | △ |
8000~ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | × | △ |
10000~ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
20000~ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ |
30000~ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
3Dゲームの場合、画質(解像度、ポリゴン数など)を落としたりしたり、動きの滑らかさを少し我慢することで楽しめるゲームも数多くありますが、美しい画像や滑らかな動きを求めるなら高性能なグラフィックカードが必須です。
そして、高性能なグラフィックカードを利用する場合、一定以上のCPU性能が無いとグラフィックカードの性能を引き出せません。
3DGameの列に記載している◎〇×は、画質や滑らかさの我慢が少ないという意味と、高性能グラフィックカードを後付けした場合でも、その能力を十分に引き出せるという意味の2つを含んでいます。
PassmarkとCPU型番の関係
参考までに、PassMarkとCPUのシリーズの対応表を作成してみました。
但し注意が必要で、同じシリーズであっても型番が少し異なるだけでPassMarkが大きく変わります。
例えば12世代目のCore-i5の場合は1.6倍もの差があります。
Core-i5 12600K のPassMark = 28100
Core-i5 1240P のPassMark = 17483
この点を留意の上、おおよその目安としてご活用ください。
PassMark | Intel 型番 | AMD 型番 |
---|---|---|
10000~ | Core-i3 10*** Core-i5 8*** Core-i7 8*** Core-i9 9*** | Ryzen-3 4*** Ryzen-5 4*** Ryzen-7 4*** Ryzen-9 4*** |
20000~ | Core-i5 11*** Core-i7 11*** Core-i9 10*** | Ryzen-5 6*** Ryzen-7 5*** Ryzen-9 5*** |
30000~ | Core-i5 13*** Core-i7 12*** Core-i9 12*** | ------------- Ryzen-7 7*** Ryzen-9 5*** |
60000~ | Core-i9 13*** | Ryzen-9 7** |
Passmarkでよくある質問
- (質問)CPUスコアとベンチマークスコアって同じものですか?
CPUスコアはCPU性能を数値として現したものですが、ベンチマークスコアはCPU以外の性能(システム全体など)も含んでいる場合があります。
従っての両者が同じとは断定できませんが、仮にそのベンチマークがCPUに限定したものであれば同じと言えます。 - (質問)CPUは PassMarkが大きければ絶対的に優れていますか?
CPU単体で見ると PassMarkが大きい方が絶対的に優れています。但しPCとしての性能を考えた場合、CPU以外の性能、例えばメモリやストレージの容量や性能に大きく左右される点はご留意ください。 - (質問)今私が使ってるPCのPASSMARKが4375なのですが、もう時代遅れでしょうか?
PassMarkはCPUの性能を現す数値であり、最新機種でも価格によってはPassMarkが低いPCはたくさん売られています。
PassMarkだけで時代遅れを判断するのではなく、購入した年月や最新のWindowsに対応しているかで判断することをお勧めします。
買い替えが必要かを判断する基準は、今行っている作業に支障があるか否かです。 - (質問)CPUベンチスコアがほぼ同じ場合、コア数が多いほうが動画編集に有利ですか
コア数が多い方が有利な場合だと思いますが、体感できるほどの差は無いかもしれません。ただ、動画編集と別の作業を並行して行う場合を想定すると、コア数が多いに越したことはありません。
ちなみに動画編集において複数のコアが使われることは少なく、動画ファイルの出力(動画のエンコーディング)にマルチコアが使われます。お使いの動画編集がマルチコアに対応しているかによっても変わります。 - (質問)古いデスクトップから新しいノートPCに買い替えする際、予算の関係でPassMarkの値が10355⇒6669に下がると、体感的な影響はありますか?
お使いの用途がワードやパワーポイントなどの一般的な事務用途や動画再生程度であれば体感できるほどの差は無いと考えられます。
体感的な差はPassMarkよりも、メモリ搭載量やストレージ性能/容量の方が体感的(使い勝手的)な影響が大きいです。 - (質問)PassmarkやCPUスコアはどのように比較すればよいのか?
まず同じソフトウェアかつバージョンで計測されていることが前提であれば、単純に値を比較するだけで構いません。とは言うものの、計測するごとに数百~1000以上のばらつきが発生するため、あくまでも目安とお考え下さい。
Passmarkは様々なサイトで公開されていますが、同じCPUであっても値が異なるのは、このばらつきが原因です。そもそもWindowsは常に裏で何らかの作業が行われており、常駐しているアプリの影響も受けるため、全く同じノートPCであっても、ばらつくのは仕方のないことです。 - (質問)PassmarkやCPUスコアは自分の用途に合わせて選べるのか?
予算に余裕のある場合は別ですが、一般的には用途に合わせて選ぶのが正解です。本記事の内容を参考に自分の用途に合ったPCをお選び下さい。
まとめ
今回はベンチマークの意味と、その中でもっとも有名な PassMark について紹介し、PassMarkの数値の目安について解説しました。
PassMark をはじめとするベンチマークの値は、あくまでも目安であり参考値です。
あまりこだわりすぎないように注意しましょう。
PassMarkの値が2~3割低くても、メモリやストレージの性能が良い方が全体的な処理速度は向上しますので、必ずトータルでお考え下さい。
この記事が皆様のお役に立てば幸いです。
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