巷では、AIとか機械学習とかが話題になっています。
C#で機械学習をするライブラリも存在はしますし、マイクロソフトが .NET ML なるフレームワークを発表したものの、まだまだ情報が少なくPythonの独走状態は止まりません。
.NET ML については、また機会を見つけて記事にするとして、Pythonを知っていて損はない(むしろ知らないと損)と思うので、C#技術者(プログラマー)が独学する上で取っ掛かりをつかむための基礎知識について、何回かに分けて解説(というか整理)したいと思います。
Pythonのインストール方法
まず最初にインストール方法について解説します。
Pythonをインストールする有名な方法として、次の3通りがあります。
- Python公式サイトからインストールする
- Anacondaを使ってインストール
- Visual Studioを使ってインストールする
Python公式サイトからインストールする
Pythonだけをインストールしたい場合は、下記のPython 日本語サイトからインストーラーをダウンロードできます。
DOSプロンプトのようなPythonインタプリタ実行環境上にソースコードを入力、又はファイルから読み込んで、実行&デバッグができるようですが、貧弱すぎるので使えません。
真剣に開発するのであれば、別途エディタをインストールしたのうが便利です。

少しだけスクロールすると、公式サイトからインストーラーのリンクだけを抜き出して作った非公式ページ(https://pythonlinks.python.jp/)へのリンクが見つかりますので、ここからインストーラーをダウンロードする方が分かりやすいと思います。
Anacondaを使ってインストール
Pythonだけでなく、Pythonで開発する上で便利な管理ツール(CONDA)や編集&実行環境(Jypter)なども一緒にインストールしたい場合は、AnacondaというPython統合環境をインストールします。
多くのAIベンダーが実務でこれを使っています。
インストーラーを探すのは少々ややこしいので、下記のURLに直接飛んでもらえれば、インストーラがダウンロードできます。
Visual Studioを使ってインストールする
Visual Studio 2019 のインストーラーから、Python開発環境一式をインストールすることが可能です。
Python統合環境であるAnacondaのMicrosoft版と考えた方が分かりやすいでしょう。

使い慣れたVisual Studioから、C#やVB.NETと全く同じ手順で、プログラム実行やブレイクポイントを使ったデバッグが行えます。
ただ、AI業界ではAnacondaがスタンダードのため、Visual StudioでのPython環境は異端児扱いされるかもしれません。
ライブラリのインストール方法
Pythonをインストールしても、そのままでは単純なことしかできません。
高度な数値計算や機械学習を行ったり、グラフを表示したりするにはPythonのライブラリをインストールする必要があります。
今回紹介した3つの方法は、いずれも専用のフォルダが作られ、そこにPython本体とライブラリが格納されます。
それぞれに適した方法を使わないと環境を壊してしまいかねないので、その点だけご注意ください。
Python公式サイトからインストールした場合
初期状態では下記フォルダにPython本体及びライブラリがインストールされます。
C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Programs\Python\Python39
基本的にはこのフォルダ直下にある Scriptsフォルダにある pip.exe を使ってライブラリのインストールを行います。
Anacondaを使ってインストールした場合
Anacondaを使ってインストールした場合、JustMeを選択するか、AllUsersを選択するかによってフォルダが変わります。

選択 | Pythonがインストールされるフォルダ |
---|---|
JustMe選択時 | C:\Users\ユーザー名\anaconda3 |
All Users選択時 | C:\ProgramData\Anaconda3 |
いずれの場合も、このフォルダ直下にあるConad コマンドを使ってインストールします。
このフォルダ直下には Scripts フォルダがあって、ここに pip もインストールされていますが、これを使ってはいけません。
ネットの記事では、Condaコマンドとpip コマンドの両方を使うと、環境が壊れて動作が不安定になる事が指摘されています。
実際に私もそのような状態になった経験がありますので、pip は使わない方が無難です。
最悪はAnacondaを再インストールしないと復旧できない事態に陥りますのでご注意下さい。
Visual Studioを使ってインストールした場合
Visual Studioを使ってインストールした場合、Cドライブの書きフォルダに、Python本体及びライブラリがインストールされます。
C:\Program Files (x86)\Microsoft Visual Studio\Shared\Python37_64
このフォルダ直下にも Scripts フォルダがあって、ここに pip がインストールされていますが、Visual Studioの場合はエディタ上からライブラリのインストールが可能です。
下記の通り方法1,もしくは方法2でソリューションエクスプローラーの表示場所に「Python環境」を表示します。
方法1

方法2

「Python環境」が表示されたら、インストールしたいライブラリ名を入力し、エンターキーを押すか、「次のコマンドを実行する:pip install xxxx」のリンクをクリックします。

以上の方法で、任意のライブラリをインストールできます。
Pythonインストールにおける注意事項
これら3つのインストール方法があり、どれを選んでもPythonはインストール可能ですが、若干注意すべきことがあります。
インストール方法によってPythonのバージョンが異なる
その時点の最新版が入手できるのはPython公式サイトからのインストールです。
Anaconda、Visual Studio は、それぞれの統合環境にPythonを組み込む必要があるため、タイムラグが生じます。
例えば、2021年5月9日時点で、特になにも指定せずインストールすると次のバージョンがインストールされます。
Python公式サイト | Python 3.9.5 |
Anaconda | Python 3.8.5 |
Visual Studio | Python 3.7.8 |
Pythonのバージョンについては、使用しているライブラリのバージョンとの整合性を保つ必要があるため、一概に高ければ良いというものでもありません。
使いたいライブラリが最新のPythonでないと動かない場合を除き、AnacondaかVisual Studioのどちらかを使って、それぞれに適した方法でライブラリをインストールするのが一番安心です。
複数の方法でPythonをインストールするのは避ける
Pythonのインストール方法によって、Python及びライブラリがインストールされるフォルダが違ってきますし、Pythonのバージョンも異なってきます。
しかし、それぞれのインストーラーがWindowsの環境変数に何らかのパスを登録しますので、複数の方法でPythonをインストールすると、どこのPythonが起動しているのか、どこのpip.exe が実行されているのかが分からなくなります。
その結果、インストールがうまくいかなくなったり、中途半端な状態でインストールされたりするといった不具合が生じやすくなります。
インストール方法をどれか1つに決めたら、特に必要の無い限り浮気をせずその環境を使い続けるのが良いかと思います。
結局、どこからPythonをインストールするのがお勧め?
総合的に考えると、Anacondaを使ってプログラミングするのが一番良い気がします。
理由は、多くのAIベンダーがAnaconda を使っているからです。
特に JypterNoteBook は広く使われていて、AIベンダーからJypterNoteBookのファイル形式で納品されるケースも多々あります。
JypterNoteBook がとっつきにくいという方は、Visual Studio code というマイクロソフト製の開発環境が使えます。
私はAnaconda+Visual Studio code が一番気に入っています。
Visual Studioと同じ環境で、バリバリプログラムを開発したいのであれば、Visual Studioがお勧めです。
古いVisual Studio(2015など)でPythonをデバックするとき、プログラムを起動するだけでも10秒近く待たされ、挙動も遅くて使い物にならないといった印象がありました。
しかし、Visual Studio 2019では大幅に改善され、Windowsアプリのデバッグとそん色のないレスポンスになっています。
ただ、完全にMicrosoft環境にどっぷり漬かってしまうことと、Anacondaに比べて情報が少ないところが少し心配です。
まとめ
今回はPythonをインストールする方法について、Python公式サイトを使う方法、Anacondaを使う方法、Visual Studioを使う方法の3通りを紹介しました。
私の中ではAnacondaが一番お勧めで、次にVisual Studioです。
Anacondaでライブラリをインストールする場合は Condaコマンドを使い、Visual Studioでは「Python環境」のタブからインストールすることを徹底すれば、安定したPython開発環境が維持できると思います。
この記事が、これからPythonを始めるC#技術者のお役に立てれば幸いです。