今回は、プログラミングの利用を前提としたノートパソコンを選ぶためのポイントを、プログラマー目線で解説したいと思います。
厳密に言うと、プログラマ目線+自作パソコンが趣味という私の経験を通してアドバイスする内容になっています。
この記事を最後まで読んだら、他のサイトのおすすめ記事にけっこう嘘が含まれていることが分かると思います。
プログラミングを前提としたノートPCのスペックと値段の目安
これからプログラミングを勉強したい、あるいは本格的にプログラミングの仕事をする上で新しく買換える場合、どれくらいのスペックが必要なのでしょうか。
他のサイトにも記載されている通り、CPU Intel Core-i5、メモリ8GB、ストレージはSSDで256GB、13インチ液晶というスペックを満たすノートPCを購入しておけば問題無いと思います。
項目 | 推奨値 |
---|---|
CPU | Intel Core-i5 又 は AMD Ryzen 3 |
メモリ | 8GB |
ストレージ | SSD 256GB |
液晶サイズ | 13インチ前後 |
解像度 | フルハイビジョン(1980x1080) |
バッテリー駆動時間 | 8時間程度 |
重さ | 1Kg前後 |
ノートPCを持ち運びすることがなければ、画面サイズ、解像度、バッテリー駆動時間、重さについてはそれほど気にする必要はありません。
逆に、持ち運ぶことを考えて小型軽量にしたいが、通常は机の上で作業したいというケースでは、10インチや12インチ程度のノートPCを購入し、液晶モニタ、キーボード、マウスを別途購入の上、ノートPCに接続して使うという事も有りです。
私の場合はPanasonicのレッツノートを仕事で使っていますが、出張以外は24インチの液晶モニタ3台と無線キーボード&マウスを接続して使っています。
価格.COM で調べてみると、Windows11搭載PCなら、2022年12月現在において6万円くらいで購入できます。
一方Macにおいては最低でも9万円近くするので、Windows10搭載ノートPCの方が価格を安く抑えられます。
CPUは世代も重要ポイント
プログラミング学習の推奨PCのスペックとしてよく言われるのが、CPU Intel Core-i5、クロック 3.0 GHzです。
確かにこれは1つの目安ではありますが、ここに「CPUの世代」という指標を入れたいと思います。
それは、たった1世代変わっただけで、Core-i5 がワンランク上のCore-i7 と同じ性能にまでパワーアップされることがあるからです。
世代とは、そのCPUのラインナップが発売後にリニューアルされた回数のことです。
IntelのCore-iシリーズが発売されてから2022年で12年目になり、今年の前半に12世代目のCPUが、後半には13世代が登場しました。
実際に、7世代から8世代に変わったタイミングと、9世代から10世代に変わったタイミングで、大きく性能がアップしています。
具体的には、Core-i5の性能がCore-i3で、Core-i7の性能がCore-i5 でも出せるようになったのです。
CPUの世代によってCPUの性能ランクが1つ変わるのですから、大変重要な要素であるにも関わらず、どのサイトでもあまり触れられていません。
CPUは1年ごとに新しい世代に移行し、2年ごとに大幅な性能アップが図られていますので、購入の際にはこの点も考慮しておきましょう。

メモリ搭載量は分野によって必要量が変わる!
ワードやエクセルなどで事務処理をしたり、ブラウザでネットサーフィンする程度であれば、メモリ搭載量は4GBであっても十分使えます。
しかし、プログラミング用の開発ツールを使う場合は、最低8GBは欲しいところです。
OSは定期的にバージョンアップが行われ、開発ツールも高機能になるにつれメモリ使用量も増えていきますが、一般的なプログラミングであれば8GBあれば十分です。
しかし、もしAI関係のプログラムを勉強しようとした場合、8GBでは不足することが多々あります。
たとえばPythonやR言語などでAI関連のプログラムを実行させる場合、アルゴリズムによってはデータをメモリに置いて、大量の演算を実行するケースがあり、8GBだと途中で止まるか、あるいはそもそも動作しない場合もあります。
用途 | 推奨メモリ量 |
---|---|
一般のプログラミング開発 | 8GB |
AI(機械学習)のプログラミング開発 | 16GB |
最新機種はメモリを後から追加できないものが多い
メモリは後で追加したり大容量のものに挿しかえられる場合もありますが、コストダウン又はトラブル回避のためにユーザーがメモリを交換できないようにメモリ交換用の機構を設けていなかったり、特殊な工具が無いと取り外しできなかったり、あるいは基盤にメモリが半田で直付け(オンボード)されている製品が増えています。
例えばパナソニック、富士通、レノボ、DELL、HPなどの有名メーカーは、購入後にメモリを交換することが出来ないタイプが数多く存在します。
ノートPCを購入する場合は、この点も十分注意しておいて下さい。
GPUはゲームや動画編集だけが用途じゃない!

GPUとは、Graphics Processing Unitの略で、通称ビデオカードとかビデオチップと呼ばれています。
用途としてはゲームや写真/動画編集というのが一般的ですが、実はAI関連のプログラミングでも威力を発揮し、GPUの有無が処理速度に大きな影響を与えます。
そもそもAI関連のプログラムは計算量が非常に多く、最近流行のディープラーニング(深層学習)で画像分類をさせる場合は、数億から数十億の演算が行われます。
GPUはゲーム上でキャラクターやミサイルが移動するときの物理演算や光の反射のシミュレーションに利用されており、単純な計算を並列で行うことが非常に得意です。
この並列計算機能をAIに活用したことで、それまで実用化されなかったディープラーニングが一気に実用化したといっても過言ではありません。
GPUには数百から数千のCPUコアが搭載されているため、CPU単独でAIのプログラムを実行させるより、20倍~数十倍高速に計算させることが可能です。
単純に言い換えると、例えばCPUだけで30時間かかるような計算が、1時間程度で終了するようなイメージです。
GPUはインテル、AMD、NVIDIAの3社が独占状態ですが、AIではNVIDIAが業界標準になっています。
もしAIを本格的にするのであれば、NVIDIAのGPUを搭載するノートPCを選ぶのが一番安全です。
Windowは乗用車、Macは特殊車両
2021年2月のデータになりますが、日本で使われるPCのOSは Windowsが最も多く、 Mac OS(OS X)に比べて4倍ほどのシェアとなっています。
一般企業においてもMac OSは稀で、ほとんどがWindows搭載PCです。
車に例えると、Windowsは乗用車であり一般大衆車なのです。
当然様々なアプリケーションがWindows様に開発されており、それはプログラム開発ツールにおいても例外ではありません。
一方、Mac OS(OS X) は昔から優秀な音楽、写真、動画などのクリエーター向けソフトが標準で備わっていたことからクリエータに根強い人気があり、その延長上でプロのクリエーター向けソフトが多数販売されており、車で例えると特殊車両と言えます。

Mac OS(OS X)はLinuxと呼ばれるOSがベースとなっているのですが、Linux自身がフリーで利用できることから、大学や研究機関で活用されてきたという歴史があり、AI関連の技術もLinux上で育ってきました。
このことから、ことAIに関してはMacと相性が良く、AI開発を専門とする企業では圧倒的にMacが利用されています。
ではWindowsではAIが出来ないかと言うと決してそうではなく、まったく同じものがWindows様に移植されています。
今までは、OSの違いをプログラムの書き換えで解決するか、Windows10上に仮想マシンを作成して、そこにLinuxをインストールするという面倒な方法が必要でしたが、2020年5月の大型アップデートによりWindows10上でLinuxがサポートされ、Linuxコマンドがそのまま動作するようになりました。
もっとも、AI開発で使われる PythonやR などの開発環境は、もともとWindowsに対応しているため、上記のアップデータの恩恵はあまり感じられないかもしれません。
唯一Macでないと困ることといえば、MacやiPad、iPhone のアプリを開発する場合くらいです。
開発自身はWindowsでも可能なのですが、実機で試したいとか、実機にリリースしたいとなると、Macがどうしても必要になります。
なんだかんだ言っても、会社が標準で使っている方のOSに合わせる方が一番良いと思います。
もし将来、クリエイターやAIエンジニアを目指すなら Mac、それ以外はWindowsを選択しておくのが無難です。
用途 | Windows | Mac OS-X |
AI以外のソフトウェアを開発、もしくは勉強したい | ◎ | ○ |
AIも含めたソフトウェアを開発、もしくは勉強したい | ◎ | ○ |
AI関連のソフトウェアだけ開発、もしくは勉強したい | △ | ◎ |
Mac、iPad、iPhoneの開発がしたい | × | ◎ |
HDDよりSSDをオススメする理由
プログラムやデータを保存するためのパーツとして、HDDやSSDがあります。
現在はSSDが主流ですが、低価格大容量であるHDDは、今でも低価格ノートで採用されており、中古PCではよくお目にかかります。
では、いったいどれくらいの違いがあるのでしょう。
ノートPCで使われている標準的なSSDとHDDの速度について比べてみました。
後ほど詳しく説明しますが、SSDには接続方法の違いから SATAとMVNe の2種類が存在するため、ここではHDD、SSD(SATA)、SSD(MVNe)の3種類について比較しました。
結果はグラフの通りで、HDDと比較すると、ランダムアクセス(異なった場所から不連続にデータを読み書きする)で100倍、シーケンシャルアクセス(1つのファイルを連続して読み書きする)で3.7倍もSSD(SATA)の方が高速です。
一方、SSD(SATA)とSSD(MVNe)を比較した場合、ランダムアクセスでは1.5倍、シーケンシャルアクセスでは4倍ほどSSD(MVNe)の方が高速です。
HDDよりSSDをおすすめする理由は、この速度差になります。

比較項目 | HDD | SSD(SATA) | SSD(NVMe) |
---|---|---|---|
読み書き速度(シーケンシャル) | 150~160(MB/S) | 500~550(MB/S) | 1700~7500(MB/S) |
読み書き速度(ランダム) | 2(MB/S) | 200~300(MB/S) | 200~500(MB/S) |
耐久性 | 常に回転しており 衝撃に弱い | 電子回路で構成され 衝撃に強い | 電子回路で構成され 衝撃に強い |
消費電力 | 9W~13W | 1W~5W | 3W~7W |
発熱 | 20°~25° | 20°~25° | 40°~70℃ |
寿命 | 3年~5年 | 5年~10年 | 5年~10年 |
一般的に、PC起動時やプログラム起動時はランダムアクセスが多発するため、HDDとSSDの速度差は劇的に体感できます。
しかし、SSD(SATA)と SSD(MVNe)の速度差は、体感できないケースが圧倒的に多いです。
理由は、データの読み出し速度よりも、CPUの性能の方が影響するからです。
従って、よほど速度にこだわる処理をさせない限り、SSD(SATA)と SSD(MVNe)の違いはあまり意識する必要はありません。
HDD搭載PCはおすすめしませんが、SSD(SATA)と SSD(MVNe)のどちらを選ぶかは、CPUやメモリ搭載量、液晶サイズ、解像度、デザイン、重量、バッテリーなどの条件の最後に考慮すればよいでしょう。
プログラマにSSDを進めるもう1つの理由
これも他のサイトではあまり書かれていないことです。
動画編集の場合は数百MBや数十GBのファイルを連続して読み書きするケースが多いため、HDDとSSDの速度差(3.7倍)は我慢できるかもしれません。
しかし、プログラム開発においては、1度のビルド作業(ソースコードを実行可能なプログラムに変換する作業)で数百~数万個の小さなファイル(数十KB~数十MB)を読み書きします。
しかも、ビルド作業はプログラムを書き換える毎に必要になるため、プログラムの開発段階では1日に数十回行う事も珍しくありません。
つまり、プログラミング開発においてはランダムアクセスの方が圧倒的に多いのです。
SSD(SATA)と SSD(NVMe)について
SSDには2種類あると言いましたが、実際はもう少し複雑です。
この部分は興味のある方のみご覧ください。
SATAやNVMe は共にストレージ(補助記憶装置)を接続するための規格(インターフェース規格)です。
SATAは2003年にリリースされ、NVMeは 2013年にリリースされました。
HDDは SATAを採用しており、HDDの置き換えとして登場したSSDもSATAが採用されています。
一方、NVMeはSATAよりも高い性能を目指しているため、物理的形状やコネクタが一新されています。
規格名 | リリース年月 | 最新バージョン | 最大通信速度 | 使われているストレージの種類 |
---|---|---|---|---|
SATA | 2003年1月 | 3.0(2009年5月27リリース) | 600 MB/秒 | HDD、SSD、mSATA、M.2 SSD |
NVMe | 2013年1月 | 2.0 (2021年5月リリース) | 3,500MB/秒 | M.2 SSD |
SSDとNVMeの関係は下図の通りです。
SSDと言っても、HDDの置き換え目的で登場した最初のSSDを指すのか、mSATA や M.2を含む全体を指すのかは、話の流れによって違ってきますのでご注意ください。
なお、この記事で比較した SSD (SATA) は、インターフェースがSATAのものを指し、SSD (NVMe) は M.2 SSD でインターフェースが NVMe のことを指しています。

NVMe のSSDは性能が優れている分値段は高くなりますが、容量を下げてコストダウンを図ることで、6~8万円のノートPCに搭載されています。
価格COMを例にとると、以下の様に MVMe SSD と書かれていますので、ここでチェックして下さい。

安く買うためのコツ
それでは、安く買うためのコツをご紹介します。
量販店より通販が2~3割はお得
量販店においても、時には掘り出し物のお買い得ノートPCが売られている事もありますが、多くの場合は通販の方が値段が安くなります。
おおよそ消費税分以上は安く、量販店の20~30%引きで売られている事が多々あります。
量販店で品物を見定めて、通販で購入するという方法が最も安く購入できます。
価格.COMなら最安値のお店が選べますので、上手に活用しましょう。
ただ、通販にはデメリットもあって、人によっては不安感を感じてしまう事、初期不良の時の交換が面倒なこと、ノートPCの設定は自分で全て行う必要があることです。
この辺がクリアできる方は、通販を選ぶとお得です。
メーカー製よりショップブランドの方がコスパが良い
NECや富士通などのパソコンより、パソコン工房やマウスコンピュータなどのパソコンショップブランドの方が、値段が安い場合が多いです。
ショップブランド以外に、HPやDell
などのPCメーカーの通販を購入する方法もあります。
こちらもNECや富士通などの製品と比べて、同じお金をだすならワンランク上のノートPCが購入できたりしますので、是非チェックしましょう。
中古のノートPCを買う
中古ノートPCを購入する方法として大きく3種類があります。
- ヤフオクやメルカリなどのオークションで購入
- 楽天やアマゾン、もしくはじゃんぱらなどの通販サイトで購入
- 大手量販店、ショップブランドの店頭販売で購入
ヤフオクやメルカリは一番安く購入できますが、保証が全くなかったり、不良品を売りつけられたり、詐欺にあったりというリスクが存在します。
最近は詐欺に合った時の保証が充実してきましたので、以前に比べて随分良くなりましたが、数千円~数万円程度のノートPCならともかく、あまり高額商品を購入することはオススメしません。
楽天やアマゾン、ソフマップ、じゃんぱらなどのネット通販なら、商品によって多少(1週間~3カ月)の保証期間が付いてきます。
大手量販店やショップブランドでも店によっては中古品を扱っており、こちらも通販と同様に1週間~3カ月程度の保証しかありませんが、店頭で購入できる分だけ安心できます。
いずれにせよ、様々な年代のノートPCが売られており、単に Core-i5 と言っても世代による性能差が大きいので、PCのパーツに関して詳しい知識が必要となります。
デスクトップPCも検討
単にプログラミングの勉強がしたいだけなら、デスクトップを購入することも検討しましょう。
おおよそ、ノートPCの半分の値段で同じ性能のデスクトップPCが購入できます。
本体の他、キーボードとマウス、モニタは必要になりますが、キーボードとマウスを合わせても1000円~2000円、モニタは2万円前半で新品の23インチが購入できます。
ノートPCはメモリ増設やHDD交換ができない製品が多いですが、デスクトップの場合はよほど古いものでない限り交換可能であり、必要に応じてビデオカード(GPU)も増設できます。
まとめ
今回はプログラマ目線によるノートPCの選び方について解説しました。
一般的なプログラム開発の場合は、CPU Core-i5、メモリ 8GB ストレージはSSD というの目安になりますが、CPUには世代ごとに性能が違うため、「昨年のCore-i5 は今年の Core-i3 と同じ性能」という事も頭の片隅に入れておいて下さい。
また、AIのプログラミングを本格的にするか、将来その可能性がある場合は、一般にゲーミングノートPCと呼ばれるGPU搭載機種で、且つ16GB以上のメモリを搭載したものを選択しておくのが無難です。
製品によっては後からSSDやメモリを増設できないものもあるので、その点は注意しておきましょう。
お金に余裕が有る方はともかく、自分に合ったPCを選ばないと宝の持ち腐れになります。
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。