私のサイトに「高卒、ニート、プログラマ」のキーワードで訪問されてくる方がいらっしゃるようなので、このキーワードでググってみました。
ヒットする記事には、「プログラマ不足なのでスキルを身に付けたら高収入が得られる」とか「独立したら年収1000万も可能」とかいい事ばかりが書かれていて、「本当にこの記事書いてる人って、IT業界で働いたことあるんだろうか」という疑問を持つ記事も多いのが実情です。
そこで本気でプログラマを目指している方にIT業界の現状を知ってもらおうとこの記事を書きました。
既にこの記事を読んでいて、プログラミングスクールのリンクにジャンプしたい方は、こちらからどうぞ。
この記事を読んでプログラマーの道が辛いと感じるなら、別の選択肢もあります。
興味のあるかたは、是非こちらの記事もご一読ください。
★★★ プログラマーを目指す上で知っておきたいこと

この章では、ニートである「あなた」がプログラマーを目指すにあたり、是非知っておいて欲しいIT業界やプログラマについての実情について解説致します。
冒頭でも申しましたが、綺麗ごとばかり並べている記事を読んで「プログラマは誰でもなれて高額収入が得られる」という誤った知識を持ったまま、プログラマを目指す方が少なからずいます。
その結果、多くの時間とお金費やしてブラック企業に就職し、ぼろ雑巾のように働かされる悲劇を生んでしまいます。
あなたが本気でプログラマーを目指すのであれば、まずこの章の内容を理解しておいてください。
IT人材不足の現状
少し古い調査結果にはなりますが、2019年に経済産業省委託事業として「みずほ情報総研株式会社」が調査した「IT 人材需給に関する調査」結果がWeb上で公開されています。

需要の伸びをどのように置くかによって結果は変わりますが、最悪の場合、あと10年後(2030年)には79万人の技術者が不足するという予測が出ています。
もう随分前からの事なのですが、実際にITの現場においても人手不足が慢性化しており、新しい開発案件を受注したとしてもプログラマーの調達は容易ではありません。
人手不足でも「誰でもいい」という訳じゃない

では、何故こんなに人材が不足しているのでしょうか。
IT業界はブラック的なイメージがあることも一つの要因かもしれませんが、実際にはプログラマーなら誰でも良いという訳では無いからです。
IT業界は、そのプロジェクトにかかわる人の単価(月単価)×人数×期間で費用を算出します。
例えば月単価70万円のプログラマを10人、6カ月拘束するとなると4千2百万円の費用が掛かるのです。
プログラマのスキルや生産性が低ければ追加で人を投入するか開発期間を延ばす必要が生じ、それだけでコストが増えてしまいます。
逆にスキルや生産性が高ければ、プロジェクトの利益率が向上します。
もし仮に未経験者をプロジェクトに投入する場合、上級プログラマーやSE(システムエンジニア)のフォロー工数が余分に発生することになりますし、万が一そこでバグが混入した場合、後工程で多くの対応工数が発生してしまいます。
つまり、生産性の低い人材をプロジェクトに投入すれば投入するほど、他のメンバーのフォロー工数が増え、生産性やプログラム品質の低下が発生し、コストが上がってしまうのです。
無論、企業として育てていきたい人材であれば、将来の投資としてプロジェクトに投入するケースはありますが、そうでない場合は多少現状のメンバーに負荷を掛けてでも仕事をやり遂げる方がメリットが大きいのです。
ましてプログラマはそう簡単に育てられるものでもなく、半年から1年の期間は最低でも必要になります。
小さい企業ほどそういう人材を育てる体力もありませんから、「これは!」と思う人材しか採用されません。
人出不足であればあるほど、「誰でもいい」という採用が出来なくなる事情がここにあります。
プログラマは誰でもなれるが、それでも向き不向きはある
プログラマーになることは誰にでも出来ます。
やる気があればほとんどの人はプログラムが組めるようになります。
しかし、中には不向きな人がいることも事実です。
これはプログラマーに限った話ではありません。
その業界に応じて、やはり向き不向きがあります。
もうずいぶん前になりますが、新人教育でプログラミングの講師を担当していた時は、20~30人に1人くらいは、明らかにプログラミングに向いていない新人が含まれていました。
プログラムの処理手順を説明すると、その時は納得してくれるのですが、いざ自分でやろうとすると、途端に思考が停止してしまうようで、いつまでたってもプログラムが完成しませんでした。
この例は極端だとしても、例えば1か所で悩むとそれ以上前に進めなくなるとか、提示したサンプルプログラムを応用できないとかいう程度であれば10人に1人くらいのペースで存在します。
まあ、この程度であれば本人の努力と時間が解決してくれることがほとんどですが、中にはプログラマーとして優秀であるにもかかわらず、潜在意識の中でプログラミングアレルギーになり、体調を崩してしまう人もいました。
プログラミングは緻密な作業であり、多くの場合は孤独です。
人との関りよりも、モニターに向かって作業する時間の方が圧倒的に多いのです。
そういう精神面も含めて、向き不向きがあるという事も念頭に置いてください。
最低限のコミュニケーション力は必須

プログラミングは一人でやるものと勘違いしている人がいますが、そうではありません。
確かにプログラミングは一人でやることが多いですが、仕事はプロジェクトという組織で取り組みます。
プロジェクトの規模にもよりますが、1つのプロジェクトには複数のチームがあり、それぞれにチームメンバーがいます。
当然日々の作業状況はメンバー内で共有されますし、定期的な会議や仕事内容の打合せなども行われます。
自分の仕事が停滞してしまったら、誰かにその内容を説明して手伝ってもらう事も必要でしょう。
つまりチームとして動いている訳で、そこには最低限のコミニュケーション力が必要になります。
無論、営業や接客業ほどのコミニュケーション力や愛想は必要ありませんが、自分の考えを相手に伝え、また相手の考えを理解するという基本的なコミニュケーション力が無くては、プログラマは務まりません。
未経験でもプログラマにはなれるが、高収入とは限らない

未経験者でプログラマになることは簡単ではありませんが、決して無理なことでもありません。
ただ、プログラマになったから高収入かというと決してそうではありません。
プログラマ=高収入というイメージがあるかもしれませんが、そういう人はごく一部で、大半は中小企業のソフトウェアハウスに在籍し、大手企業からの下請け、もしくは孫請けで働いている人たちです。
例えば大手企業がプログラマ単価100万円で仕事を受けたとして、その下請け企業が80万円で請け負ったとします。その孫請け会社になると60万円まで目減りし、会社の利益や諸経費が引かれてプログラマ個人に給料が支払われます。
つまり、個人には30万~40万しか入ってきません。
当然スキルが高いプログラマとそうでないプログラマでは給料に差が出てきますから、プログラマになりたてなら更に収入は下がります。
一般の企業に比べると多少は単価が高いかもしれませんが、決して高収入という訳では無いのです。
フリーランスは実力とコネが必要
よくフリーランスで年間1000万円は普通という記事を見かけます。
同じような事を言うYouTuberもいますよね。
でも、そんなに普通に1000万円の収入が得られるのであれば、みんなやってます。
確かに、他の業界に比べると1000万円を超えられる可能性は高いのかもしれません。
しかし、ある程度スキルが付いたから、明日からフリーランスになって年収1000万円ということは、まずありません。
フリーランスの武器は技術力ですが、正直技術力が高い人はいくらでもいます。
そして、フリーランスと契約する企業の立場からすると、正直リスクが大きいのです。
例えば、依頼した作業が本人の都合(病気等も含む)で遅れたり、品質が悪かった場合、それは誰が責任を持つのでしょうか。
企業対企業であれば、派遣元に文句を言って責任を追及することも可能です。
しかしフリーランスの場合、その個人が働けなくなったり、どこかに雲隠れした場合、どうしようもなくなります。
ましてセキュリティが重要な昨今、顧客情報や個人情報が持ち出されたとして、賠償責任を負わせようとしても、フリーランスだとそもそも責任を負えないケースも出てきてしまいます。
企業にとって直接フリーランスと契約するのは少なからずリスクがあるのです。
ですから、普通は派遣先の企業からは今まで通りの仕事がもらえるように段取りし、フリーランスになります。
場合によってはどこかのソフトウェアハウスの名前を借りて(当然中間マージンは取られます)、仕事を受けることも必要になります。
フリーランスになって全く別の会社から仕事をもらうという事は非常に困難で、今やっている仕事を継続してもらうことと、そのプロジェクトが終了した時も別案件を発注してもらえるようなコネクションを持つことが非常に重要になります。
仮にスキルが有って、そのプロジェクトに不可欠な人材だと判断されれば、少なくとも月収60万~80万はもらえるようになるため、1000万近い収入を得る事ができるようになります。
役割 | 相場 |
---|---|
SE上級 | 100~160万円 |
SE中級 | 80~120万円 |
SE初級 | 60~100万円 |
PG 大手企業 | 50~100万円 |
PG 下請け・個人 | 40~60万円 |
クラウドでの仕事では高収入は難しい
コネクションが無くてもフリーランスになって、クラウドワークスなどで仕事を探せばいいじゃん。
そういう声があるかもしれません。
でも、クラウドワークスは競合が多く、どうしても単価が安くなりがちです。
正直アルバイト程度であれば問題ありませんが、あれをメインにするのであれば、かなり数をこなさないと高額収入を得られないという事は覚悟しておいて下さい。
まして生半可なプログラミング知識で勝負しても勝てないし、仕事を得られたとしても苦労するだけです。
ただし、ある程度のスキルがあって、スキルアップという目的で(時給が安くなったとしても)仕事を受けるのであれば、それは有りです。
★★★ プログラミングスクールの価値

プログラミングを独学でマスターできる、もしくは出来ているのであれば、この章を読み飛ばして下さい。
もしあなたが、今までに入門書やYouTube、Webサイト等で独学を試みたものの途中で挫折してしまったり、あるいは独学に自信が無い場合、或いはプログラミングスクールに通うかどうか迷っているのであれば、とても参考になると思います。
プログラミングが独学できない理由

プログラミング未経験から独学でプログラミングをマスターすることは可能ですし、やっている人も数多くいます。
最近は独学しやすいようなYouTube動画やWebサイトも充実していますので、昔に比べると遥かに勉強しやすい環境ではあります。
しかし、プログラミングをマスターできた人は1割程度という調査結果もあるように、途中で挫折してしまう人が大半を占めるという現実があります。
その理由として
- プログラムのエラーが解決できない
- プログラミング能力の成長が分かりにくいため、モチベーションが続かない
- 入門書や入門サイトに書かれている内容を全て理解しようとして、自信がなくなる
- 強制力がない為、プログラミング学習を習慣化できない
ということが挙げられています。
私の経験上、これ以外にも
- 自分が書いたプログラムが、正しい書き方をしているのか判断付かない
- 疑問点があっても聞くことが出来ない
というのも大きな要因ではないかと思います。
プログラミングは、実現したい1つの事に対して色々な書き方が出来るのですが、その裏返しとして望ましくない書き方(エラーが発生しやすい、後から変更が難しいなど)も出来てしまいます。
また、独学の場合は断片的に知識の習得に陥りやすく、逆に何の知識が不足しているかが把握できません。
そのため、全体を体系立てて理解するまでに数多くの試行錯誤や時間を消費してしまい、結局挫折の道をたどってしまうのです。
プログラミングスクールはスキルの土台を作る近道

プログラミングスクールはいくつもありますが、そもそもが車に例えると教習所のようなものです。
プログラミングスクールに入って学んだからと言って、就職して即戦力でバリバリ働けるかというと、それは違います。
スクールという限られた範囲の中(=教習所)でプログラミング技術(=運転技術)を学ぶだけのこなので、就職して開発プロジェクト(=路上運転)に参加したら、そこで様々な事を覚えなければなりません。
実際のプログラム開発現場では、プログラミングのスキル以外に、開発対象の業務知識、設計書の記載内容を理解する力、テスト力、コミニュケーション力、スケジュール管理能力などが求められますし、入社後に担当するプロジェクトによっては未経験の言語や開発ツール、データベースを扱うことも多々あります。
また、プログラミングの応用範囲は広く、工場系、AI系、銀行系、物流系、製造系、販売系など、様々な業種で使われていますし、同じ業種においても会社ごとに開発スタイルが違ってきます。
運転技術を身に付けた後、タクシー業に行くのか、運送業に行くのか、自衛隊に入って装甲車に乗るのかによって、必要な知識や技能が変わってくるのと同じで、実際に活躍する場で覚えないといけないスキルが山ほどあります。
では、プログラミングスクールは意味が無いかというと、決してそうではありません。
プログラミングスクールに通うことで、プログラミングを体系的に学習できますし、分からないところは聞くことが出来ます。
プログラムエラーで悩んだときは、適切なアドバイスをもらえますし、自分が不足している知識が何で、どうやれば習得できるかも教えてもらえます。
プログラミングスクールを活用することで、これまで独学で挫折した経験があっても、効率的且つ最短でプログラミングの基礎をマスターすることが出来ます。
「プログラミングスクールの卒業=即戦力でバリバリ働く」という訳ではないものの、実践を通して自分のスキルを磨くための土壌は出来上がっているのです。
これは非常に大きな成果であり、後は入社した会社の仕事内容に合わせて必要な知識を習得し、プログラミングスキルを向上させていくのみです。
★★★ お勧めのプログラミングスクール

プログラミングスクールで学ぶことは独学よりはるかに早くスタートラインに立つことが出来ます。
もし時間とお金が許せるのであれば、プログラミングスクールを検討すべきでしょう。
プログラミングスクールには有料と無料がありますので、ここではそれらを詳しく紹介していきます。
お勧めの無料プログラミングスクール
無料のプログラミングスクールはWebアプリの開発に限られており、学べる言語はJava、Ruby、PHPが基本です。
無料であってもプログラミングスキルを身に付けることは可能ですが、費用が発生しない分簡単に辞めてしまえるため、モチベーションの維持が重要になってきます。
その他にも、通学が必須であったり、学校の場所が東京に集中していたり、年齢制限があったりと、いろいろな制約条件が付いてきます。
しかし、それが許容できるのであれば、コスパは抜群です。
詳しくは 【現役SEが語る】話題の無料プログラミング・スクール9選 という記事で紹介していますので、検討される場合は是非ご一読ください。
お勧めの有料プログラミングスクール
有料プログラミングスクールのメリットは学べる言語やカリキュラムの豊富さと、手厚いサポートです。
ほとんどのスクールが現役エンジニアを採用しており、就職活動でのアピールに使えるポートフォリオの作成をカリキュラムに組み込んでいます。
また、生徒一人につき専属のメンターが割り当てられ、プログラミングに関する質問だけでなく、転職活動における様々なサポートも受けることが出来ます。
サポートの内容はプログラミングスクールによって異なりますが、無料カウンセリングや無料体験授業などが用意されていますので、本格的に勉強したい場合は問い合せたり、資料請求などしてみてはいかがでしょうか?
有料プログラミングスクールが気になる人、もしくは迷っている人はこちら
★★★ 高卒ニートが就職先を勝ち取るためには

プログラミングをやってみて興味を持って、楽しいと思えるのであれば、その先努力していくことでプログラマーになることは出来ます。
更に実力を積んでコネクションを積み上げることができれば、フリーランスとして活躍することも期待できます。
問題はどうやってプログラマとして就職するかです。
高卒ニートは就職で不利になることはあっても、有利になることはありません。
ですから、そのハンディを乗り越えてプログラマを目指す必要があります。
間口を広げるため、転職エージェントを上手に活用しよう

プログラミングスキルはスクールや独学で何とかしてもらうとして、就職先を探さなければなりません。
Webサイトで求人している会社を探して、直接その会社に応募するという方法もありますが、それには限界があります。
少しでも間口を広めて条件の良い就職サイトを見つけるために、転職エージェントを上手に活用しましょう。
転職エージェントに登録すると、担当者(メンター)が付きます。
メンターと自分のスキルや希望する会社について相談しながら、本当に行きたい会社を探すことができます。
会社が見つかって、いざ面接が決まったとしたら、今度は面接の攻略方法についてもアドバイスをもらうことが出来ます。
それに、表立って求人をしていなくても、良い人材がいれば入社させたいという会社も多々あるのですが、そういう情報は転職エージェントしか持っていません。
自分でWebサイトを使って就職先を探すより、就職のプロが選んでくれた候補の中から絞り込む方が、圧倒的に楽であり且つ希望する会社、合格しやすい会社が見つかる確率も高くなります。
メリットが多いにもかかわらず、利用するこちらの費用は無料(転職が成功したら、転職先から報酬が支払われる仕組みのため)なのですから、利用しないのは勿体ないです。
私は過去2回転職しましたが、いずれも就職斡旋サイトを活用しました。
ただ、メンターによっては多少内容を誇張してくることもあるので、そこは話半分に聞くことも必要です。
私の場合、「このA社に○○さんのことを話したら、是非会ってみたいと言ってました。来週土曜日あたりどうですか?」みたいな事を言われて、実際に面接に行ったらそうでもなかったということはありました。
まあ、メンターも営業マンなので、おだて上手で口上手だと思いますが、そうやって数社目に転職が決まり、私の今日があるのですから、このメンターには今でも感謝しています。
まとめ
今回は「高卒、ニート、プログラマ」というキーワードで検索した結果、ヒットした記事に「良い事」しか書いていなかったことが多いため、業界で長年プログラマに従事してきた一人の技術者として、誤解を解くために記事を書きました。
「高卒ニートでもプログラミングスクールで勉強したら、プログラマー即戦力として高収入が得られるので、そこで数年頑張ってフリーランスになって1000万円稼ごう」と思ったら大間違いだという事が分かって頂けたでしょうか。
もう一度繰り返しますが
- 年収1000万円はゴロゴロいるのは嘘で、仮にいたとしても、その何百倍、何千倍も普通のプログラマーが普通の給料で働いている
- プログラミングスクールを卒業してもスタートラインに立つだけのことで、就職してからが本当のスタートラインである
- プログラミングは一人の作業だが、仕事はチームでするので最低限のコミニュケーション力は必要
という事は念頭に置いてください。
ただ、努力すれば高卒、ニートでもプログラマーとして就職し、高収入を得る事は不可能ではありませんので、それは忘れないでください。